監査法人の福利厚生について【住宅手当??】

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みなさん、こんにちは!

公認会計士・税理士のけんです。

当記事では、監査法人の福利厚生事情についてお伝えいたします。

当記事につきまして、以下の読者様を対象に執筆致しました。

  • big4監査法人の福利厚生内容について確認されたい方
  • big4監査法人の4法人それぞれで福利厚生内容について違いを確認されたい方
  • big4以外の監査法人の福利厚生内容について確認されたい方
目次

big4監査法人の福利厚生制度について

なお当記事において、big4監査法人とは以下の4法人をことを指します。

  • EY新日本有限責任監査法人(Ernst & Young)
  • 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)
  • 有限責任あずさ監査法人(KPMG)
  • PwCあらた有限責任監査法人(PricewaterhouseCoopers)

※私は、EY新日本に約2年、監査法人トーマツに約2年間在籍していました。

著者は、big4監査法人に4年ほど在籍しておりました。

4年間の在籍中について、後述する「ポイント制度」を除いては、特段福利厚生制度について大きく変動することはありませんでした。

また、その後もbig4監査法人の福利厚生事情について、確認してきましたが、2012〜現在(2021年)に至るまで、大きな制度の枠組として変動があったのは、EY新日本とPwCあらたで退職金の制度の変更があったくらいでしょう。

現代は、確定給付型の企業年金(DB)を採用していたところから、確定拠出型の企業年金(DC)に変更しつつある時代と言えます。米英程、急激な変化ではなく、依然としてDBも加入者数も増えてはいますが、少しずつDCへ切り替える企業が増えています。

今後の社会情勢にもよりますが、big4監査法人でも、さらに確定拠出年金(DC)に変更するところが出てくるかと思います。

確定拠出企業年金(DC)とは、掛金の拠出は企業が行いますが、その運用は従業員が行うというものです。

この場合、企業は運用リスクを負う必要がありません。一方で、確定給付企業年金(DB)とは、運用までを企業が行い、運用の成果の結果として、企業は従業員に給付する額を決定するという制度です。

現代は、DBによる年金運用がひと昔と比べ難航しており、想定していた従業員への給付額に達するまでの運用成果が出せず、企業が追加で掛金を拠出しなければならない状況が多く発生しています。

一方で、監査法人業界独自の事情として、福利厚生制度の変動は基本的にはございません。

今後の「公認会計士の働き方」に大幅な変化が発生しない限りは、監査法人の福利厚生体制も特段変わることはないといえるかもしれません。

以下では、具体的にbig4監査法人の福利厚生制度について見ていきます。

福利厚生制度については(ご存知の方も多いかもしれませんが)大きく法定福利厚生と法定外福利厚生に分けられるため、

一応分類してご説明をさせていただきます。

法定福利厚生制度

これは、法人であれば、どの企業でも法律で義務付けられている福利厚生制度です。(当然、big4監査法人でもそれ以外の監査法人でも同様です。)

広義では、社会保険と言われる制度ですね。

具体的には以下の通りです。

  • 健康保険
  • 介護保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

※「雇用保険」「労災保険」をあわせて、「労働保険」といいます。

※上記は一般的な会社員を想定した社会保険です。公務員の方は若干異なります。

これらは、特段監査法人に限った福利厚生制度ではないので簡単に見ていきます。

(不要な方は読み飛ばしていただければと思います。)

健康保険(介護保険含む)

医療給付や手当金などを支給して、生活を安定させることを目的とした「社会保険」です。

big4監査法人の場合、「健康保険組合」をその組織にもっています。

保険料率としては、給与(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)の概ね10%前後を推移しますが、健康保険の場合は、会社と従業員で労使折半するため、実質的な負担率は概ね5%程度となっています。

big4の健保組合の場合の負担率についても、概ね5%程度となっていますが、詳細については各保険組合のウェブサイトをご参照ください。

※ちなみに独立して「個人事業主」で仕事をしている公認会計士の方は、「国民健康保険」に加入します。

「国民健康保険」は「健康保険(社会保険)」とは異なり、会社との折半はありません。

厚生年金保険

厚生年金保険とは、公的年金の一つです。

会社員や公務員に加入義務がある公的年金制度です。

毎月の給料から月給の9.15%が保険料として天引きされていますが、会社との折半になっており、実際の保険料率は18.3%です。

厚生年金保険に加入している人は、国民年金にしか加入義務のない自営業の人よりも高い保険料を払っている分将来もらえる年金の受給額が多いことが特徴です。

労働保険

労働保険とは、「労災保険(労働者災害補償保険)」と「雇用保険」を合わせた総称です。業務や通勤が原因となるケガや病気、休業や失業時の収入を保証するもので、労働者の生活と雇用を守るために作られました。

労災保険においては、業務上のケガや病気で働けなくなった労働者の生活を守り、療養費や収入の補償をし、労働者が死亡した際は、給付金により遺族の生活を支援します。労災保険の保険料はすべて事業所が負担します。

雇用保険は、失業もしくは育児等の理由により休業した場合に、再就職支援や収入の減少に対する支援を行います。労働者への支援だけでなく、加入する事業所にも雇用を継続するための支援金などが支払われるのが特徴です。雇用保険料は、労働者と事業主が双方で負担します。

法定外福利厚生制度

ここからは、「big4で共通して制度化されている福利厚生制度」と、「big4各社の独自の福利厚生制度」があるため、分けて記載をしていきます。

big4共通の福利厚生制度

ここでは、big4で共通する福利厚生制度を見ていきます。

大きく以下の三つの福利厚生制度があると考えられます。

  • カフェテリアプラン
  • 資格維持関連費用負担
  • 公認会計士企業年金基金

またbig4では、大企業に多い以下の福利厚生制度については、設けられていません。

  • 住宅手当補助
  • 食事補助
カフェテリアプラン

上述した通り、各big4監査法人は健康保険組合を組織しています。

組合の中には、「カフェテリアプラン」という制度が設けられています。

「カフェテリアプラン」とは、毎年もしくは半年に一回、一定額のポイント(補助金)を支給し、その支給された範囲内で、健康食品、健康器具など、従業員の健康を促進する福利厚生メニューを選択・注文できる制度です。

従業員一律の福利厚生ではなく、自分に必要な福利厚生のメニューを自発的に選択することができるというスタイルが、カフェテリアプランです。

カフェテリアプランという名前は、好きな飲食物を幅広い選択肢から注文できるという点に由来し、“カフェテリア”プランと言われています。

ちなみに、big4監査法人だと、毎年5万ポイント前後の付与がされます。

big4監査法人に所属していると、なかなかその恩恵に気づきませんが、補助金が支給されると考えれば、計画的に使用することができれば、優れた制度と言えるのではないでしょうか。

水をはじめとした、飲料水

健康食品

まくら等の寝具

自転車等健康器具

などバラエティ様々です。

資格維持関連費用

大きく分けて3種類の資格維持関連費用があります。

公認会計士協会準会員登録費用

論文式試験合格者は、公認会計士協会の「準会員」として登録します。当登録費用を法人が負担します。

会費は以下の通りです。

入会金:10,000円

年会費:普通会費18,000円/年、地域会会費6,000〜12,000円/年 ※地域により異なります。

実務補修所研修費用

論文式試験合格後、正会員になるために、実務補習講義を受講します。当費用を法人が負担します。

入所料:15,000円

補習料:255,000円 計270,000円

公認会計士正会員登録費用

実務補習を終了し、修了考査に合格すると、晴れて「公認会計士」を名乗ることができます。

「公認会計士」を名乗るために、協会に支払う費用があります。当費用を法人が負担します。

登録免許税:60,000円

入会金:30,000円

施設負担金:50,000円

年会費:普通会費72,000/年 地域会会費42,000〜54,000円/年

このように見ると、「資格」を維持するのに、高額な費用がかかることがわかります。

当費用を監査法人で負担してもらえるのは魅力的ですね。

公認会計士企業年金基金

公認会計士企業年金は、公認会計士の老後の福利厚生の向上を目的とする確定給付企業年金として、日本公認会計士協会によって設立されました。現在357の事業所が加入しています。

上の図のように、国民年金そして厚生年金の2階建て保証の上に、さらに「公認会計士企業年金基金」が3階建ての保障として載っています。

出典:公認会計士企業年金基金

特徴的なのは、掛金の拠出についてです。

ご承知の通り、国民年金であれば、一定額を、厚生年金であれば、収入(給与)の多寡に応じて、自身の収入より拠出します。

公認会計士基金の掛金には、将来の給付のための「標準掛金」と、基金の事業運営に要するための「事務費掛金」があり、加入者の標準給与に決められた掛金率を乗じることで算出されますが、この全額を事業者が負担するため、加入者の負担がありません。

つまり公認会計士企業年金に加入している監査法人に所属している限り厚生年金にプラスして年金基金をかけてもらっているのです。

<積立・支払について>

毎月の掛金を元に積み立てられた給付の原資を「仮想個人勘定残高」と言います。
基金加入中は、毎月の掛け金が積み上がるほか、以下の日に前回からの利息の積み増しをした以降分をこの「仮想個人勘定残高」に積み増ししていきます。

しかし基金を3年未満で脱退した時は、年金・一時金の給付はないので、もし退職や転職を考える場合は、通算期間を考えた方が良さそうです。

なお、転職先も監査法人や会計事務所で、「公認会計士企業年金基金」の加入事業所であれば、脱退時の仮想個人勘定残高はそのまま引継ぐことが出来ます。

退職に伴う基金脱退の手続きについては、勤務事業所から届出しますので、退職者本人からの脱退手続きは必要ありません。

加入期間が3年以上ある人は、その期間に応じて積み立てていたお金をいずれかの方法で受領または移管することができます。

公認会計士企業年金基金の年金原資を、他の基金への移行する場合には、それが可能かどうかは、新たな就職先の企業年金への確認が必要となります。

基本的に、公認会計士企業年金基金は「確定給付企業年金基金」のため、同じ企業型確定拠出年金・個人型確定拠出年金の場合は、年金原資の移換は可能となっています。

なお、公認会計士企業年金基金については、他の年金制度から給付原資を受け取ることはできませんので、一般事業会社から監査法人に転職する際は注意が必要です。

昨今、年金支給が危ぶまれる中、自身による掛金拠出を要さず、年金原資を確保できる「公認会計士企業年基金」はとても優遇された制度と言えるのではないでしょうか。

住宅手当補助

big4では、住宅補助にあたる福利厚生制度はございません。

big4では基本的に長期の就業、所属(10年以上〜)を想定していないため、家賃補助を設けると、従業員がなかなか退職しない仕組みが出来上がってしまうというのが理由です。

その分を基本給に上乗せしている、というのが、法人側の言い分でしょう。

一方で、後述する中堅・中小監査法人では、私が転職活動していた当時は住宅手当を10,000円程度支給している法人がありました。

中堅・中小監査法人では、(もちろん法人の節税の目的もありますが)big4と異なり離職率が問題となるので、逆に住宅手当を少しでも支給することで、お得感を出し社員に長く在籍してもらおう、と仕組みを作っているのですね。

食事補助

以前、big4も業績がとてもよかったので、残業した際の食事手当を2,000円支給していたこともあったようです。

しかし、現在はどの法人も基本的に直接食事補助の手当はございません。

big4独自の福利厚生制度

ここからは、big4独自の福利厚生制度について見ていきます。

なお上述した通り、big4とは以下の4法人のことを指します。

  • EY新日本有限責任監査法人(Ernst & Young)
  • 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)
  • 有限責任あずさ監査法人(KPMG)
  • PwCあらた有限責任監査法人(PricewaterhouseCoopers)

詳しいbig4監査法人の違いについては、以下の記事で記載していますので、ご参照ください。

EY新日本有限責任監査法人 福利厚生制度
  • 会員制リゾート:日本オーナーズクラブ、星野リゾート・トマムなどと法人契約をしています。全国(北海道、上越、軽井沢、箱根、浜名湖など)にある契約宿泊施設の利用が可能です。
  • 育児休暇:育児休業を2歳まで取得することができます。全国的な待機児童問題は依然として深刻です。保育園に入園できないことが理由で退職するケースを防ぎ、キャリア継続を支援します。
  • ベビーシッター利用制度:小学校卒業までの子を養育する職員が業務のためにベビーシッター派遣サービスなどを利用する場合、利用料の60%を補助しています。
  • EY託児:祝日は保育園がお休みです。繁忙期の祝日出勤日に安心して勤務ができるように、法人内にて臨時の託児を行っています。
  • 育児コンシェルジュ:仕事と育児の両立支援策の一環として、「育児コンシェルジュサービス」を導入しております。妊娠中から現役ママ・パパさんの育児相談、保活まで育児に関するどんなご相談事も専門のコンシェルジュが相談に応じます。

出典:https://www.shinnihon.or.jp/recruit/recruit/welfare.html

有限責任監査法人トーマツ 福利厚生制度
  • 英会話:海外赴任希望者はグローバルチーム所属かつ、一定要件を超えるものについては英会話レッスンを無料で受けることができます。1000冊以上の書籍が完備されていますが、業務に必要な書籍であれば購入可能です。
  • 職場環境:食堂はありませんが、有料で軽食などがとれるカフェが設置されています。無料のドリンクサーバーには、コーヒー、カフェラテ、ココア、スポーツドリンク、スープなどが取り揃えられています。
  • 自己啓発関連(セミナー代無料など):所属部署のパートナーが業務への必要性を判断し、都度セミナー代の負担額が決められます。
  • レンタル設備:ポケットWi-Fiは、月額500円で私的利用が公認されています。また、社用携帯はiPhoneで、パソコンはLet‘noteが1人1台支給されます。
有限責任あずさ監査法人 福利厚生性制度
  • ボランティア活動休暇:職員の社会貢献度活動支援の一環として与えられる休暇です。社会福祉、地域貢献、環境保護に関わる活動など、原則としてボランティアと一般的に認められる活動に限定されます。4月1日から翌年3月31日までを休暇年度として、年間1日が付与されます。ボランティア休暇を取得する際には、事前申請が必要で、かつ取得後2週間以内に活動内容を報告しなければいけません。
  • 裁判員等休暇:裁判員候補者、裁判員又は検察審査員に選任された際に、同制度に参加し、その責務を果たす社会的責任の一環として与えられる休暇です。裁判員休暇を取得するときは事前の届出を必要とし、事後に裁判所が発行する証明書等必要書類を提出しなければいけません。
  • リラクゼーションルーム(社内マッサージ室):法人内に社内マッサージ室がございます。
PWCあらた有限責任監査法人 福利厚生制度
  • 語学学習支援制度:パートナーを除く全社員に、約50のプログラムから選択可能な語学学習プログラムを設けており、費用補助(ただし、受講率やスキル向上などの条件有)をしています。また、CASEC(英語を読む・聴く・書く能力のオンラインチェック)は年10回、GBC(英語を話す能力の対面チェック)は年3回まで無料にて受講可能です。
  • PwC Funs活動:PwC Japanグループの有志によって各種クラブが設立されています。趣味を同じくするメンバーが所属や職階を超えてネットワークを構築しています。公式化されたクラブには活動費用の補助があります。
  • 育児サポート

【出産特別休暇】
妊娠~産後1年まで、5日間の有給休暇(半日単位)が取得可能です。配偶者の場合、出産立ち会いなどのために、出産予定日(出産日が予定日からずれた場合には出産日を基準とすることも可)以降6カ月以内に連続3日以内の休暇(1日単位)が取得できます。

【育児特別休暇】
育児休業取得可能期間の末日までに、父母ともに連続15営業日までの有給休暇を取得可能です。

【育児休業】
父母ともに子が2歳に達するまで休職が可能です。

出典:https://www.pwc.com/jp/ja/careers/mid-career-c/work/employee-benefits.html

big4監査法人以外の福利厚生制度について

「big4監査法人以外」の福利厚生制度についてですが、基本的には、big4監査法人の福利厚生制度と同様です。

ただ、「ポイント制度」については、保険組合を組織していない法人も多いので、詳しくは転職エージェントからヒアリングするか、求人票を確認していただければと思います。

なお法定福利厚生度については、上述したものと内容に相違はないので、法定外福利厚生制度、特に独自で設計している福利厚生制度について見ていきます。

法定外福利厚生制度(独自の福利厚生制度)

法人によって、手厚い福利厚生制度を設置している法人がございます。

しかしながら、近年では中小監査法人の統合も多く、文化・制度の統合が間に合っていないことから福利厚生制度の設計が間に合っていない法人もございます。

そのため、big4と比較し、毎年福利厚生制度が変動するポテンシャルを秘めているのが、中堅・中小監査法人です。

私が転職活動していた際には、中堅・中小監査法人の求人も多く確認しましたが、

従業員50人〜100人規模の中堅監査法人で2法人ほど、10,000円程度の住宅手当を支給している法人がございました。

また、面接を受けている中で、残業がどうしても必要になってくる時期がある仕事なので、

繁忙期は今後「食事手当」を支給していきたい、と仰っているパートナーもいらっしゃいました。

正直なところ、中堅・中小法人はbig4と比較すると、「従業員に長く働いてもらいたい」「規模を拡大したい」と考えているパートナーが多くいらっしゃいます。

ただ、制度的に(福利厚生制度は)後回しになりがちであるため、現状十分な制度ができていないという法人が多いようです。

最後に

big4監査法人とbig4以外の監査法人の福利厚生について見てきました。

大法人や福利厚生制度を売りにだしているメガベンチャー企業などに比べれば、この業界の福利厚生制度はまだまだ未発展かもしれません。

※上記で記した通り、資格維持関連費用だけでも一人当たり高額な金額にのぼります。

しかしながら、基本給の水準も考えれば(そしてカフェテリアプラン、資格関連費用なども考慮に入れると)福利厚生としては十分ではないでしょうか。

以上、監査法人の福利厚生制度について見てきました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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